ネコと家族とカメラの日記

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ぷら小屋

染み(前編)

せっかくの日曜日なのに今日は1日雨である。
それにお盆でもあるので、雰囲気的に不思議な体験をした話を書いてみたい。

私が園児だった頃に住んでいた家は、終戦直後に建てられた古い2階建ての木造家屋だった。
資材も少なく、当時の祖父が建てるのに苦労したとこぼしていたそんな家だったと記憶している。
当時、私は兄と一緒に二階の子供部屋で寝ていた。
一般的な日本家屋の部屋で、天井には木目の目立つ木板が敷き詰められている。

木板は今の製法とは異なるために1枚1枚が結構異なる。
ただ、一本の木からスライスされたなというのが木目で分かる、そんな天井だった。

天井の隅にある木目には大きな人の横顔があった。
それははっきりとしたモノでなく、木目の模様からそのように見えたと言うだけなのだが。

寝る前に、その横顔を見ながら兄と楽しんだ。
その視線のずっと先には小さな模様であるが、女の子と母親の手をつないだ全身像があるのだ。
きっと、横顔はあの母子の父親なのだろう。
いつもそう思いながら布団を被って眠りについていた。

天井には色々な顔の木目があった。
笑った顔、泣いた顔、怒った顔。
顔の模様は木目だけでなく、焦げた後のような黒い染みからもできていた。
探せばいくらでも見つかるので、兄と布団から見上げながら互いに探し合ったものだった。
怖いという感じはなかったが、ただ部屋に一人でいるとその大きな横顔にいつも見られているような気がして、あまりいい気はしなかったのを覚えている。

私が小学生になって間もない頃に、寝室の天井板が総張り替えさせられた。
前のような木目の目立たない、シンプルな天井だ。
「ああ、あの親子はもう見られないのだな・・・」そう思いつつ真新しい天井を見ながら眠る新しい生活に入ったのだ。

Nikon Df+NIKKOR VR24-85mm/3.5-4.5G

それから月日も経ち、私がまだ独身で社会人になったばかりのある日、ひょんな事から母からあの天井の話を聞かされた。

あの天井を覚えているかい、というものだった。
もちろん今もはっきり覚えているよ、と私が話すと、母は当時どんどん増えていく天井の顔に戦慄を覚えていたのだという。
それは子供の部屋の天井だけに現れていたらしい。

子供を守らないと、怖くなってそう感じた母は慌てて天井を張り替えさせたのだという。
以来、天井に顔の模様は出なくなった。
その時に子供部屋にあった、ある箪笥も一緒に仕舞ったらしい。

天井に顔が現れるようになったのは、その箪笥を知人から引き取ってからだと母はいう。
私もよく覚えている。子供用のカラフルな箪笥だった。
そういえば途中から見なくなったあの箪笥は母がかたづけたのかと納得していると、あれはあまりいい物ではないと母は言い放った。

あの箪笥には奇妙なシミがあったと指摘されて私は思い出した。
カラフルな引き出しの一番下とその上の段の右隅に、うっすらと半身から上が写っている母子の形をしたシミがあったのだ。
園児だった私は、そのシミを鉛筆やマジックで縁取りなどしてふざけたり、上下段の引き出し入れ替えたりしたことを覚えている。
いつの間にか引き出しの左端には、全身像の小さい男児の様な薄いシミも現れた。

母は言った。
それらのシミが日を追う毎に濃くなってきて、気味が悪かった。
そのころから同時に天井にも変なシミがたくさん出てきて、捨てようと考えていたのだという。
だが、結局はある理由で箪笥を捨てることは出来なかったのだという。

それを聞いた私は箪笥の仕舞い場所を母から確認した。
もう一度見てみたくなったのだ。
止めなさいと言う母の忠告を無視して、興味本位でその箪笥を探しに行ったのであるが・・・。

後編に続く

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